二酸化炭素を食べる微生物

今日の日経新聞に、
「アセトン・ブタノール発酵」という
バイオ技術が紹介されていた。


アセトン・ブタノール菌は、
空気を嫌う嫌気性の微生物で、
二酸化炭素”を食べるという特徴がある。
現在、九州大学で研究されている。


アセトン・ブタノール菌の誕生は、
第一次世界大戦までさかのぼる。
大量の爆薬が必要であった、当時、
ダイナマイトの原料となるアセトンを
微生物で生産するという研究が行われていた。
その結果、アセトン・ブタノール菌を利用して、
グルコースなどの糖を取り込み、発酵を行うことで、
アセトンとブタノールを生産することに成功した。
ちなみに、ブタノールというのは、
液状のアルコールで、ネイルエナメルの
ベース成分に使われる。


日本では、石油の確保がむずかしくなっていた
第二次世界大戦中にこの技術を利用して、
代替燃料の開発を行った。
この代替燃料は、
ゼロ戦の燃料としても使われたそうである。


その後、石油がエネルギーの主流となり、
アセトン・ブタノール菌は、処分されてしまい、
残ったのは、九州大学の研究室だけになってしまった。
そして、地球温暖化の危機が叫ばれる中、
再び、アセトン・ブタノール発酵が
注目され始めたのである。


アセトン・ブタノール発酵を行うと、
バイオ燃料と同時にプラスチックの原料を生み出す
ことが可能となる。
現在、この実用化計画に、
三菱化学協和発酵キヤノン日立製作所、ホンダ
などがからんでいるそうだ。


このバイオ技術の例から見てもわかるように、
資源のない国だからこその省エネ技術が、
これから大いに役に立つはずだ。
実際、1970年代のオイルショックの後、
省エネ技術の開発に真剣に取り組んだ結果、
日本における国民一人当たりのエネルギー消費量は
先進国の中で最も少ない。
環境関連特許の数も、米国は日本の半分程度、
欧州は1/3ほどである。


日本の政府は、なぜ、民間企業と連携して、
この省エネ技術を切り札に外交を進め、
日本の国益確保に動かないのだろうか。
首相自らが、海外に向けてトップセールス
行えば、「環境先進国ニッポン」を
もっと、もっとアピールできるはずなのに。
日本の環境技術は、
あまり利益を生み出していないのが現実である。
海外では、国家のリーダーが外交に出かける時、
財界の要人が同行するのが当たり前である。
外交は、国と国との商談の場でもあるのだから。
日本では、そういった発想はないようだ。
首相は、日本で最大、最強のセールスマンであることを
自覚してもらわないと・・・。
世界のため、地球のために役に立つ技術は、
トップ自らが、海外に売り込めばよいのだ。


ビジネスの発想を持たない国のリーダーの
トップセールスにたよれないならば、
世界をあっと言わせ、世界が認めざるを得ないような
新しい技術を生み出すしかない。
二酸化炭素を食べる
「アセトン・ブタノール菌」の例からもわかる通り、
環境問題の切り札は、微生物だと思う。
地球の環境をずっと一定の状態に保ってきたのは、
微生物の働きなのだ。
微生物には、生物にとって有毒な物質を
無害なものに分解する力がある。
日本がずっと培ってきた発酵の技術が、
今こそ役に立つ時だ。