バター騒動に思う

ずいぶんと間が空いてしまったが、
久しぶりにブログをアップしてみた。


最近、食品価格の高騰や品不足が気になっている。
ついこの間も、バターの品不足が深刻化し、
国が乳業大手各社に異例のバター増産を要請した。


家庭用バター不足の原因は、オーストラリアの干ばつで、
乳用牛用の飼料が高騰したこと、
新興国の食生活の変化でバターの需要が拡大したことなどが重なり、
輸入バターの価格が高騰し、
業務用バターの調達が困難になった料飲店などが、
家庭用バターの購入に走ったためである。


しかし、この話には伏線がある。
日本では、2006年、酪農団体のホクレン農業協同組合連合会が、
生産過剰を理由にバターの原料となる生乳を廃棄している。
さらに、乳用牛では生計を立てられなくなった畜産農家が、
廃業もしくは食用牛への転換を進めたため、
この時点で、国産バターは減産に転じていたのである。
酪農家ばかりでなく、農家でも同様の現象が起こっており、
日本の食糧自給率は、下がる一方となっている。
今回のバター騒動は、輸入食品にたよる日本の食料生産の脆弱性
現実のものとなった事態なのだ。


話をバターに戻すが、増産要請は出されたものの、
乳業大手各社は、実際のところ、酪農団体からどの程度の生乳を
調達できるかは不透明で、増産には不安があるらしい。
そのため、当面は、チーズ生産のために調達した生乳を
バター用に振り替えて、対応するとのこと。
今度は、チーズがスーパーの棚から消えるかもしれない。


世界に目を向けると、もっと悲惨なことになっている。
食品価格の高騰が、世界に10億人いるといわれている
1日1ドル(約100円)以下で生活している
貧困層の生活を直撃しているのだ。


アフリカでは昨年11月、食料不足が原因で、
モーリタニア全土で暴動が発生。
今年に入ってからは、モザンビークカメルーン
コートジボワールセネガルなどに暴動が拡大している。


中米のハイチでは、国連平和維持活動(PKO)の
ナイジェリア人警官が、食料を狙った暴徒に襲われて、
車から引きずり出され、虐殺されるという事件が起こっている。


食品価格高騰には、いろいろな要因があるが、
元をたどっていくと、米国の影響によるところが大きい。


まずは、サブプライム問題の発生で、
世界の株式、債券市場から流出した投機的な資金が、
原油・金・穀物などの商品市場に逃げ込んだために、
実需を伴わないバーチャルな形で、
穀物価格の値段を押し上げたことがあげられる。
さらに原油の高騰が、食品の輸送価格を押し上げたことも、
原因の1つとなっている。


米国の金融機関は、サブプライムおよびその関連商品で、
一次は莫大な利益を得ており、
その利益獲得に貢献した立役者の面々は、法外な収入を先取りして、
今や、悠々自適の生活を送っている者もいるという。
サブプライム問題は、本来ならばお金を貸してはならない相手に
金融機関が貸付を行ったために発生した問題であり、
ある意味、一種の詐欺行為だ。
しかし、そのツケを払っているのは、
サブプライムで私腹を肥やした関係者ではなく、
実体経済が悪化することで職を失った労働者や
原油高・食料高で生活費を圧迫されている貧困層なのである。
なんとも、腹立たしい話である。


もう1つの原因は、ブッシュ大統領が打ち出した
バイオエタノールの大増産政策だ。
トウモロコシやサトウキビなど、本来は食用の穀物が、
バイオ燃料生産に利用されたため、
食料用の穀物の作付け面積が減少し、
食料不足を引き起こし、食料価格の高騰を招いたのである。


このような現実を危惧したEU、南アフリカ共和国、中国などでは、
バイオ燃料の原料に食用の穀物を使わない方針を決定している。
しかし、当事者であるブッシュ大統領は、
「米国農家がバイオ燃料の原料を生産することは国家の利益」として、
推進政策を続ける考えを強調している。
米国の庭であるハイチで食料を巡る暴動が起こっているのに、
この発言は解せない。
この暴動が拡大すれば、米国にも大量のボードピープルが押し寄せ、
混乱を招く可能性が高いのに、いったい何を考えているのだろうか。


今回の食品価格の高騰は、
環境異変や新興国の人口増加が招いたものというより、
人災の色合いが強いように思う。
東西冷戦が米国の勝利に終わった瞬間から、
米国が提唱する金融資本主義という価値感が、
グローバルスタンダードとして広く世界を席巻している。
しかし、金融資本主義は、多くの貧困層の犠牲の上に、
ほんの一握りの人間だけが幸福を手にする欠陥の多いシステムである。
今回のサブプライム問題やそれに伴う様々な問題を見ていると
金融資本主義は、アメリカが一人勝ちするための
アメリカンスタンダート以外のなにものでもないと
強く思わざるを得ない。

黄色いダイヤ

エコノミスト6月26日号の特集は、「穀物バブル」。
これを読んでいると、トウモロコシやサトウキビを原料とする
バイオエタノール大増産計画が、世界の食糧事情に
大変大きな影響を与え始めていることがよくわかる。


この現象の発端となったのは、ブッシュ米大統領が、
今年1月に行った一般教書演説である。
この演説においてブッシュ大統領は、
2017年までに、トウモロコシを中心とするバイオ燃料
現在の50億ガロン(1ガロン=3.79リットル)から
350億ガロンへと7倍に増やすと宣言した。


1ガロンのエタノールを精製するのに必要なトウモコロシは、
0.35ブッシェルである。
350億ガロンでは、122億ブッシェルとなる。
2008年度の米国におけるトウモロコシの生産見通しは、
125億ブッシェルと予測されているので、
今後、食用を含めてすべてのトウモロコシを
エタノールに振り向けても、
賄えるかどうかという数字である。
いったい、ブッシュ大統領は何を考えているのか・・・。


ところで、ここで、クイズを出してみたい。
「スポーツタイプ多目的車(SUV)の燃料タンクは、
25ガロン(約95リットル)であるが、
この燃料タンクをバイオエタノールで満タンにしようすれば、
450ポンド(204キロ)のトウモコロシが必要になる。
このトウモロコシを人間1人当たりの食料にすると
何日分のカロリーに匹敵するか」


答えは、1年分。
車1台を走らせるために、人間1年分の食糧が
使われることになるのだ。
バイオエタノールの大増産計画は、
本当に環境対策の切り札なのだろうか。


それにしても、環境問題に対して、
ほとんど無関心に等しい姿勢をとっていたブッシュ大統領が、
なぜ突然、地球温暖化問題に積極的に
関与するようになったのだろう。


それは、イラク問題で失点を重ねた窮地を
脱するためというのが大方の見方である。


米国は世界のトウモロコシ生産の4割強、
輸出量の7割近くを占める「トウモロコシ大国」である。
バイオエタノール大増産計画を推進することで、
トウモロコシ価格をはじめ、農産物が値上がりすれば、
農家および農業関係者に大きな恩恵がある。
それによって、農業関連業界の支持を取り付けようとしている
と考えられる。


イラク戦争の背景には、石油の利権問題があった。
バイオエタノールの増産は、
情勢不安定な中東のエネルギー依存からの
脱却につながる政策で、国家安全保障上、大きな意味がある。
また、トウモロコシを「黄色いダイヤ」に仕立て上げることは、
「トウモロコシ大国」米国の国益誘導につながるのだ。


さらに、バイオエタノールの大増産計画は、
地球温暖化対策の切り札という羊の皮をかぶっている。
「地球に優しいエネルギーなのだから」
というまくら言葉がつけば、反対を唱える道理はない。
現状では、バイオエタノールの弊害を唱える
真の環境保護論者が、逆に槍玉にあげられている。
政治家も、投資家もこの羊の皮をかぶった
バイオエタノールに便乗して、
その恩恵に預かろうとしている。
世界一の大金持ち、ビル・ゲイツ
バイオエタノール関連会社に投資しているという。
環境問題は、人類存亡の危機をかけた重大問題なのに、
やはり、その裏側には、お金と権力が
うずまいているということか・・・。


それにしても、世界的な穀物価格高騰の兆しは、
食糧自給率の低い日本にとって、大変心配な問題である。
次の数字を見て頂きたい。
これは、農林水産省が公表している
2003年の世界の食糧自給率の数字である。


オーストラリア 237%
カナダ     145%
米国      128%
フランス    122%
スペイン     89%
ドイツ      84%
英国       70%
イタリア     62%
スイス      49%
日本       40%


この数字を見ておわかりの通り、日本の食糧自給率は、
先進国中で最低の水準にある。
日本の食糧自給率は、過去40年間右肩下がりで、
低下してきた。


温暖化の影響が広がっていくと、今後ますます、
穀物の収穫量が減っていくことが予想される。
事態が深刻化した場合、
自分の国が食糧危機に直面している時に、
どこの国が食糧を分けてくれるというのか。
日本の食糧自給率を上げることは、
今すぐにでも取り組まなければならない大問題なのである。


今、世の中は年金問題一色である。
今度の参院選の争点もこの年金問題一色なのだろう。
もちろん、年金問題も大変深刻な問題であることは
否定の余地なしだが、
目先の混乱ばかりに目を向けていると、
もっと大きくて、もっと深刻な問題を
見落としてしまう可能性がある。
日本の農業、畜産業をどうしていくのか、
もっと真剣に議論する必要があるのではないか。

オルタナ

オルタナという雑誌がある。
環境や健康、ヒトと社会と地球を大事にする
ビジネスの新しいあり方に深い関心を持つ高い意識を持った
ビジネスパーソン向けの雑誌である。


今年4月に創刊され、隔月で発行される。
6月が第2号となるわけだ。


私がオルタナを知ったのは、
副編集長の木村麻紀さんから創刊のお知らせを頂いたからだ。


木村さんは、時事通信社を経て独立。
ジャーナリストとしては初めて、
日本の媒体で「ロハス」について
本格的に取り上げた方だ。
現在も、地球環境の持続可能性を重視した
ビジネスやライフスタイルを
エネルギッシュに取材しておられる。


木村さんと私の出会いは、木村さんから
頂いた1本のメールがきっかけである。
そのメールは、「日経ビジネスアソシエ」で
拙著「ロハスな人の株式投資入門」(太陽企画出版)の
書評を取り上げて下さったという連絡であった。


それから時々、メールを交換していたが、
彼女がドイツのミュンヘンに在住されていたため、
1年以上、お目にかかる機会に恵まれなかった。


しかし、昨年9月、オルタナ創刊の準備のために帰国され、
ついこの間、ようやく初対面を果たしたのである。


初めてお会いした木村さんは、
想像通りのエネルギッシュな女性だった。
さすが、男性中心の「記者」の世界を
腕一本で渡ってきただけのことはある。
外見は小柄で、かわいらしい女性だが、
中身はまぎれもない硬派である。


オルタナのオフィスは、東京で唯一のチェコ料理の
レストラン「cafe ano」の3階にある。
築40年の洋館を改築したとてもかわいらしいレストランだ。


ちょうど、ランチタイムに伺ったので、
当然、チェコ料理を堪能してきた。
チョイスしたオーダーは、
「マッシュルームとハムと卵のブランボラーク」。
じゃがいもをすりつぶしたペーストを
フライパンで焼き上げたものに、
マッシュルームとハムと卵が添えられている。
さながら、チェコ風ジャガイモのお好み焼きといったところだ。
もちもちとした食感で、独特の風味がある。
その風味は、マージョラムというチェコの香辛料の香りだそうだ。
チェコのおふくろの味。なかなか、おいしかった。


話が横にそれてしまったので、もとに戻そう。
オルタナのすばらしいところは、
おしゃれな流行語といったイメージでとらえられがちな「ロハス」を
きちんとビジネスシーンに落とし込んで、情報発信していることだ。
オルタナは間違いなく硬派なマガジンである。


木村さんこんなふうに語っておられた。
オルタナではロハスという言葉は使わないようにしているんですよ。」
その気持ち、私もよくわかる。
最近、ロハスという言葉があまりにも安易に使われすぎており、
安っぽいという印象さえ与えかねない陳腐な言葉におとしめられて
しまったような気がする。
だからこそ、ロハスの意味を真剣に考えている者は、そうたやすく
ロハスを口にすることができないのだ。
木村さんのその言葉を聞いただけで、オルタナの真摯な姿勢が
まっすぐに伝わってきた。


オルタナの目的の1つは、価値観を共有するビジネスパーソン
コミュニティを形成することにある。
今後は、WEB上だけではなく、リアルでも交流会などを
開催していくとのこと。


世の中を変えるためには、まず個人1人1人の意識の変革が必要だ。
1人1人の意識が変われば、経済活動が変化してくる。
地球を守るためには、経済活動を根本的に見直していかなければ
ならないのだ。
オルタナの考え方に共感して、集まってくる方々は、
いろいろな分野の第一線で活躍されているので、
個人の意識改革の旗振り役になっていくだろう。


オルタナをウェブで登録すれば、無料で直接配送してくれる。
無料購読登録をしないと、350円+送料250円がかかる。
興味のある方は、ぜひ登録を。
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平均気温が6.4℃上昇したら

国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC)は、
今世紀末の地球の平均気温が、
20世紀に比べて最大6.4℃上昇するとの
予想をまとめた。


もし、平均気温が6.4℃上昇したら、
旱ばつによる水不足、洪水や暴風雨の被害拡大、
森林火災、サンゴの白化現象など
様々な被害が予想されるが、
感染症の拡大も大きな問題の1つである。


感染症の問題で、特に深刻なのが、
ハマダラ蚊の媒介するマラリアである。
世界では、年間3億人がマラリアを発症し、
100万人以上の人が命を落としている。
大部分はアフリカで発生し、アフリカでは、
30秒に1人の割合で子供が犠牲になっているという。


温暖化に伴い、このハマダラ蚊が
日本でも生息するようになれば、
私達もマラリアの危険にさらされることになる。


ところで、アフリカのマラリア対策に、
住友化学が一役買っていることをご存知だろうか。
住友化学は、蚊帳となる糸の原料となる樹脂に、
防虫剤を織り込んだ「オリセットネット」
という製品を開発した。
このオリセットネットは、洗濯しても、
効果が長期間持続するという特徴を持っている。


住友化学は、このオリセットネットを
無償供与することによって、
アフリカにおけるマラリアの発生率を確実に
減少させてきた。


オリセットネットの効果が広く知れ渡るようになると、
現地生産能力を増強する運びとなった。
現地メーカーとの合弁会社による
新規工場の建設などにより、
現地では、多くの新規雇用が見込まれ、
周辺地域の経済活性化にも貢献できるとしている。


オリセットネットは、公共衛生には有効だが、
非常に市場が限られた商品なので、
商売としては成り立たない。
そこで、住友化学は、この技術をアフリカに
委譲することに同意したのだ。
これぞまさに、社会貢献である。


戦後の日本は、物質的に大変豊かな国となった。
格差社会が拡大したと言われてはいるが、
アフリカなどで極限の貧困にさらされている人たちのように
人間としての生存、生活、尊厳を脅かされて日本人は、
虐待やDV(ドメスティック・バイオレンス)などを除いて
それほど多くはないと思う。
格差はあろうとも、多くの人は自力で、
お金を稼ぐチャンスはある。


日本のような恵まれた環境にあるものは、
もてる能力を十分に発揮して、富を創造し、
「人間の安全保障」が守られていない国に
還元するのが務めなのだと思う。


テロリストを生み出す本質的な原因は、
「貧困問題」だと言われている。
どこかの国のように「国家の安全」を錦の御旗に、
力でテロ組織を押さえ込もうとしても、
根本的な問題解決にはならない。


温暖化や環境破壊が進めば、
「貧困問題」はより深刻な局面を迎えることになる。
お金のあるもののみが、
食糧や水や医療を手に入れることになり、
お金を持たないものは、
生命の危機に直面することになる。
新しい強力な武器を開発して、力を誇示することに
お金を使うより、もっと大切な使い方があるはずだ。


多くの方は、ご存知ないかもしれないが、
実は、日本政府は、アフリカの貧困解消に
積極的に取り組んでいる。
2000年からスタートした
「ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト」だ。
この取り組みは、住民5万人程度の農村を一単位として
食糧生産や感染症対策、飲料水や電力の確保、
道路整備といったライフライン
インフラ整備のために5年間で
2000万ドル(約23億6000万円)を拠出した。


これが呼び水となり、民間の支援団体や
志に賛同する個人から1億ドル(約118億円)が集まった。


その結果1年で目覚まし成果をあげたという。
その成果は、以下の通り。
1.農業指導により食糧生産が飛躍的に増えた。
2.マラリア発生率が下がった。
3.村に診療所が建設、運営された。
4.飲料水の給水所が建設、維持された。
5.学校教育の定着。
6.電気、道路の整備によりインターネットの利用も可能に。


ライフラインが整備されれば、人間は自活のための
経済活動を行うことができる。
生存の危機という制約から逃れることができれば、
自分の持てる能力を発揮して
富を生み出すことができるようになるのだ。
人の命を奪う高価な武器を製造するより
このようなプロジェクトにお金を使う方がどれだけ
有効か、考えるまでもない。


戦争で、富を得る人がいる限り、
世界で争いがなくなることは決してないと思うが、
温暖化、環境破壊という人類共通の危機を前にして、
多くの人の意識が変わりつつあることは、
間違いないと思う。

グリーンマウンテン・コーヒー

米国ナスダック市場に、
グリーンマウンテン・コーヒー・ロースターズ
という会社が上場している。
米国バーモンド州に本社を置く
コーヒー豆の販売店である。


1981年バーモンド州の小さなカフェとしてスタート。
当時の社員数はわずかに20名だった。
現在は700人と急成長し、
100種類以上の豆を
スーパーやコンビニ、レストランなど
約8000の卸売業社に販売している。
自社店舗は持たず、個人向けの豆は
信販売で直販している。


グリーンマウンテン・コーヒーの特徴は、
商品の約30%が、オーガニックやフェアトレードコーヒーで
占められていることである。


フェアトレードというのは、
貧困のない公正な社会を作るために、
アジア、アフリカ、中南米などの生産者側が、
安い値段で作物を買い叩かれるという
不公平な取引を阻止し、
生産者にとって公平な流通取引を支援することで、
貧困層の自立をサポートするという運動である。


業績は好調。2006年の売上高は
2億2500万ドル(265億円)と、
前年比39.5%の増加。
株価も3年で2.3倍になっている。


グリーンマウンテン・コーヒーの
社会的責任企業としての取り組みは、他にもある。
税引き前収益の最低5%を寄付にあてていること。
また、再生不能資源で作られていた紙コップを廃止、
インターナショナル・ペーパーと共同開発した
トウモロコシを用いたバイオプラスチック
使用している。
バイオプラスチックは、土中のバクテリアによって、
水と二酸化炭素に分解される
環境に優しい素材なのだ。


グリーンマウンテン・コーヒーを
日本で販売している店が茅ヶ崎にある。
それは、「サウザリー コーヒー&プレート」
というカフェ・レストラン。
2006年10月にオープンしたばかりの店だ。
店舗で、コーヒー豆を販売しているので、
購入することも可能。
調べてみたら、オンライン通販もやっている。


話は変わるが、よく考えてみると、
日本の株式市場には、
グリーンマウンテン・コーヒーのような
環境・健康・社会貢献に真正面から取り組んでいる企業が
あまりないように思う。
存在しても、業績、株価はお世辞にも
成長企業と呼ぶことはできない企業が多い。


典型的な例は、秋川牧園だ。
1997年11月にジャスダックに上場した
無農薬無投薬の食肉、鶏卵、牛乳、無農薬野菜等の
生産・販売会社だ。
業績は大変厳しく、今期も赤字決算の予想。
株価は、2005年3月期の黒字転換後上昇し、
いったんは、1000円という高値をつけたが、
現在は、500円台に沈んでいる。


省電舎も然り。
日本でのエスコ事業(エネルギー削減保証ビジネス)の
草分け企業である。
工場やビルなどに省エネルギー対策を施行し、
節約できた金額の一部からフィーをもらうという
ビジネスモデルであるが、
2006年9月期決算で赤字に転落し、
上場直後の高値202万円から大きく下落し、
現在は、1/6の34万円となっている。


このような企業は、これからの日本にとって必要な
製品やサービスを提供している企業だと思うので、
なんとかふんばって、業績を立て直してもらいたい。
投資対象として、きちんと評価されれば、
環境・健康・社会貢献銘柄に対する
投資家の見方も変わってくると思うからだ。
投資の世界発の環境問題の取り組みが
あってもいいだろう。

エネループの三洋電機

今月、1947年創業以来、60年間続いてきた
三洋電機世襲経営に幕が下りた。


三洋電機は、ゴールドマン・サックス大和証券SMBC
三井住友銀行の金融3社から3000億円の
金融支援を受け、再建中であるが、
迷走状態に陥っている。
ほぼ3期連続赤字が確定的である上に、
2月に発覚した過年度決算を巡る不正会計問題もからみ、
金融3社に追放される形で、
4月1日付けで、創業家3代目の
井植敏雅社長が辞任したのである。
敏雅氏の実父である井植敏最高顧問も退任。
プロパーの佐野清一郎執行役員が、
社長に昇格する人事が発表された。


世襲経営に幕を下ろさなければならなくなった
そもそもの原因は、
井植家が、“血族の経営”にこだわったことにある。


井植敏氏は、
2002年に幹部候補の新卒採用制度を始め、
国内外の枢要な部署を経験させるなど、
帝王学を授けて、
将来の幹部候補を育てようとした。
外部の血を入れようとの試みだ。
しかし、結局は、長男の敏雅氏を
社長に据えてしまった。


変わらない世襲路線の中で、
実力ある役員や幹部は次々に退任。
残ったのは、最高実力者である敏氏の
イエスマンばかりとなってしまった。
危機感の薄いぬるま湯の経営が続く中、
金融や家電、半導体などの不振事業の縮小・撤退が遅れ、
現在のような事態を招いてしまったのである。


そんな三洋電機ではあるが、
私は個人的に、三洋電機の商品が好きだ。
特に気に入っているのが、「エネループ」という
“使い捨てない乾電池”である。
電流を使い切っても、専用の充電器で充電すれば、
繰り返し1000回使える電池なのである。


二次電池(充電式電池)の欠点は、
時間が経つと自然に放電してしまい、
フル充電しても残存率は半年で75%、
1年後に数%になってしまうことである。
これでは、リモコンや時計といった長期間使用の
製品には対応できない。


三洋電機はこの問題を解決し、
半年後で90%、1年後で85%の残存率を
維持することに成功した。


優れた商品性能に加え、
エコを全面に打ち出したマーケティング活動も
エネループがヒットした一因である。
三洋電機は、エネループマーケティングにおいて、
自己放電の抑制という製品特性をアピールするのではなく、
1000回繰り返し使えるという
耐久性や資源性をアピールした。
1本のエネループと1000本の乾電池を
並べて対比したポスターは、
環境への配慮を強烈に視覚に訴えている。


さらに、パッケージが美しい。
水をたたえた美しい地球を連想させる
プルーのグラデーションは、
無機的な電池のパッケージとは一線を画している。


さらに、コストの面でもお徳。
単3・単4兼用充電器のメーカー希望小売価格は、
2940円。
しかし、1000回繰り返し使えるので、
1回当たりのコストは約4円。
充電時の電気代は1回当たり約0.2円。
これは、普通の乾電池を買うよりも安い。


この商品のコンセプトは、
主婦層を中心とする女性の心をがっちりつかんだ。


皮肉なことに、このエネループは、
3月19日付けで退任した野中ともよ会長が提唱した
三洋電機の新ビジョン「Think GAIA]
の商品第一弾として誕生した商品だ。


野中ともよ氏は、2002年に井植敏氏に招かれて
社外取締役に就任した。
会長就任直後に開いた再建計画の発表会見で、
野中氏は、「地球との共生」というビジョンを掲げ、
環境問題の重要性に時間を割いてスピーチしていた。
当時の三洋電機は、
経営上の緊急事態に直面しており、
その足元の経営状態と経営ビジョンとのギャップに
報道陣からは失笑すら漏れたという。
三洋電機の再建が軌道に乗ったところで、
このビジョンが示されればよかったのに・・・。
と思わずにはいられない。


三洋電機は、
高い技術力を持った優秀な企業なのだから、
一刻も早く、経営を軌道に乗せて、
環境に優しい製品を、どんどん世に送り出して
ほしいものである。

二酸化炭素を食べる微生物

今日の日経新聞に、
「アセトン・ブタノール発酵」という
バイオ技術が紹介されていた。


アセトン・ブタノール菌は、
空気を嫌う嫌気性の微生物で、
二酸化炭素”を食べるという特徴がある。
現在、九州大学で研究されている。


アセトン・ブタノール菌の誕生は、
第一次世界大戦までさかのぼる。
大量の爆薬が必要であった、当時、
ダイナマイトの原料となるアセトンを
微生物で生産するという研究が行われていた。
その結果、アセトン・ブタノール菌を利用して、
グルコースなどの糖を取り込み、発酵を行うことで、
アセトンとブタノールを生産することに成功した。
ちなみに、ブタノールというのは、
液状のアルコールで、ネイルエナメルの
ベース成分に使われる。


日本では、石油の確保がむずかしくなっていた
第二次世界大戦中にこの技術を利用して、
代替燃料の開発を行った。
この代替燃料は、
ゼロ戦の燃料としても使われたそうである。


その後、石油がエネルギーの主流となり、
アセトン・ブタノール菌は、処分されてしまい、
残ったのは、九州大学の研究室だけになってしまった。
そして、地球温暖化の危機が叫ばれる中、
再び、アセトン・ブタノール発酵が
注目され始めたのである。


アセトン・ブタノール発酵を行うと、
バイオ燃料と同時にプラスチックの原料を生み出す
ことが可能となる。
現在、この実用化計画に、
三菱化学協和発酵キヤノン日立製作所、ホンダ
などがからんでいるそうだ。


このバイオ技術の例から見てもわかるように、
資源のない国だからこその省エネ技術が、
これから大いに役に立つはずだ。
実際、1970年代のオイルショックの後、
省エネ技術の開発に真剣に取り組んだ結果、
日本における国民一人当たりのエネルギー消費量は
先進国の中で最も少ない。
環境関連特許の数も、米国は日本の半分程度、
欧州は1/3ほどである。


日本の政府は、なぜ、民間企業と連携して、
この省エネ技術を切り札に外交を進め、
日本の国益確保に動かないのだろうか。
首相自らが、海外に向けてトップセールス
行えば、「環境先進国ニッポン」を
もっと、もっとアピールできるはずなのに。
日本の環境技術は、
あまり利益を生み出していないのが現実である。
海外では、国家のリーダーが外交に出かける時、
財界の要人が同行するのが当たり前である。
外交は、国と国との商談の場でもあるのだから。
日本では、そういった発想はないようだ。
首相は、日本で最大、最強のセールスマンであることを
自覚してもらわないと・・・。
世界のため、地球のために役に立つ技術は、
トップ自らが、海外に売り込めばよいのだ。


ビジネスの発想を持たない国のリーダーの
トップセールスにたよれないならば、
世界をあっと言わせ、世界が認めざるを得ないような
新しい技術を生み出すしかない。
二酸化炭素を食べる
「アセトン・ブタノール菌」の例からもわかる通り、
環境問題の切り札は、微生物だと思う。
地球の環境をずっと一定の状態に保ってきたのは、
微生物の働きなのだ。
微生物には、生物にとって有毒な物質を
無害なものに分解する力がある。
日本がずっと培ってきた発酵の技術が、
今こそ役に立つ時だ。