エスカルゴ牧場

スローフード運動という言葉がある。
ファーストフードに対して、
スローフード
なんだか、わかったようなわからないような。
その定義は、
「地元の良質な食材を提供する小生産者を守り、
彼らが提供する食材の価値を
その地域の消費者全体に認識してもらう運動」
ということらしい。
地元で生産して、地元で消費する、
地産地消」ということ。


では、次のケースは
スローフードと呼べるのか。
三重県にある『エスカルゴ牧場』のケースである。
タツムリの養殖だからスローフード
いきたいところだが、
本来、エスカルゴは日本の食材ではない。


三重エスカルゴ開発研究所代表取締役
高瀬俊英氏は、もともと鉄工所を経営していた。
今から20年前に、
エスカルゴと出会ったことが、
エスカルゴ牧場」を運営するきっかけとなった。
本場フランスでは年間に
30億匹ものエスカルゴが食されているが、
最高級品種の「ブルゴーニュ種」は、
乱獲と生息環境の悪化で、
フランスでも絶滅の危機に瀕しているそうだ。
多くの研究者が養殖に取り組んだが、
当時、成功例はなかった。


高瀬氏は、
「これはいける!!」と考え、
エスカルゴの養殖に取り組むことにした。
多くの学者でさえうまくいかなかった養殖に
素人の高瀬氏が取り組むのは無謀だ。
しかも、フランスと日本では、
気候も違えば、土壌も、そこに住むバクテリアも違う。


しかし、高瀬氏は成し遂げた。
養殖棟の中に、フランスの森と同じ環境を作り、
温度や湿度だけでなく、
腐葉土の層や配合飼料の成分、
機器や設備の設計まで研究し尽くし、
世界初のエスカルゴの養殖に成功したのだ。
これ、世界的に、
かなりサプライズな出来事だったらしい。
フランスの研究者から譲受けた7匹の
ブルゴーニュ種のエスカルゴは、
今では20万匹にも増えている。


冒頭でもふれたが、
このブルゴーニュ種は、
現地で絶滅の危機に瀕しており、
欧州で保護指定動物になっているそうだ。
20万匹ものポマティア(エスカルゴの名前)
を見られるのは、
世界でも「エスカルゴ牧場」だけ。
すごい事業に成功したんだなあ!
社会的な意義も大きい。
しかし、そんな貴重な種を、
パクパク食べちゃっていいのかな。


このポマティアくん、
保護指定動物になっているだけあって、
大変大きくて、おいしそう。
帝国ホテル、グランドハイアット明治屋
三越、うかい亭などなど、
多数のレストランやホテルに卸している。


個人でもインターネットで購入可能。
9個入り2835円、
その他、12個入り、20個入り、30個入りがある。
トースターで3−4分焼くだけで、
食べられるので、
家に居ながらレストラン気分を味わえるらしい。


絶滅の危機に瀕しているエスカルゴを
しかも本来、日本に生息していない種を
このように手軽な値段で味わえるのは、
養殖という技術のおかげ。
しかし、機械に管理された環境で
育てられる生き物は、
野菜工場のケースと同様にやはり不自然だ。
そう考えるとやはりスローフードとは、
いえない気がする。


このまま、環境破壊が進んだら、
今私たちが普通に口にしている天然の食材が、
養殖でなければ食べられなくなる時が
くるのかもしれない。
普通のものを普通に食べられないなんて、
どう考えても、普通の状態じゃない。


政治家のみなさんは、
産む機械発言」の問題に
全精力を傾けている場合じゃありませんよ。
この問題で審議が空転してるんじゃ、
それこそ、税金の無駄遣いもよいところ。
エネルギーをかけるとことが
違うんじゃないんですか。
こうして、時間を空費している間にも、
食糧危機や水不足が、
刻一刻と近づいているかもしれないのに。


食糧危機は、静かに近づくるのではなく、
ある時突発的の襲ってくるそうだ。
2004年に、中国が穀物の備蓄を使いきり、
穀物生産国から穀物輸入国に転じた事実を
真剣に考えるべきだ。
いったい、世界の食糧を誰が作るのか?
日本にそのしっかりした備えがあるとは、
とても思えない。
大変、心配である。