ダイエー迷走

ものすごくご無沙汰してしまいました。
ひさしぶりにブログを書きます。


今日は、ダイエーについて。
ダイエーの再生が難航しています。
7月28日、産業再生機構保有するダイエー株33.6%すべてを
丸紅に698億円で売却するという発表があり、丸紅は、ダイエー株の
44.6%を握る筆頭株主となりました。


7月28日の時点では、続投を示唆していた樋口社長が、8月18日に
辞意を表明。いったい何があったのでしょう。


樋口社長は、従業員からの信頼は厚かったようです。
8月28日付け日経ビジネスの記事によると、あるダイエーの店長は、
以下のように語っています。
「店長会議などでは即効性を求める指示はださず、小売りの基本動作を
確実に行うように説いていた。現場を守ってくれる人だった。」


考えて見れば、ダイエーの従業員は次々に交代する経営陣に不信感を
募らせていたと思います。経営陣が変わるたびに、方針が変わり
振り回されるわけですから。
1999年に鳥羽社長、2001年に高木社長、2005年に樋口社長。
ようやく樋口社長と林文子会長のコンビで、現場の士気が
上がりかけてきたところで、またも社長交代。
10月からは、丸紅出身者が社長に就任することになりますが、
現場を大切にしてきた樋口社長とのギャップはかなり大きいのでは
ないかと思われます。


従業員のやる気を大切にする現場主義を貫いてきた樋口社長の
やり方は、丸紅の首脳陣の目には、「改革のスピードが遅い」
とじれったく映っていたようです。この樋口社長と丸紅経営陣の確執が、
今回の辞任騒ぎの背景にあります。


実際、樋口社長が相次いで打ち出した営業強化施策の多くが、
中途半端に終わっているのも事実。
理由はいくつか考えられますが、一つは人手不足。
樋口社長の直轄プロジェクトに「野菜新鮮宣言」というものがあります。
文字通り、販売する野菜の鮮度を向上させるためのプロジェクトですが、
新鮮な野菜を店舗に並べようとすれば、時間と手間がかかります。
しかし、ダイエーは、店舗閉鎖に伴うリストラや自然減によって、
約2600人の社員を削減しています。
しかも退社していったのが、店の切盛りを知り尽くしたベテランの
従業員達。新しいことをやろうにも、人手が足りないし、経験も足りない
というのが現実です。
人手不足はさらなる弊害も生み出しました。1人当たりの業務が
急増して売り場を維持できなかったり、発注ミスが起こったり。



2つめの理由は「権限なき責任」。
ダイエー再建に関して、出資者(スポンサー)である産業再生機構
投資ファンドのアドバンテッジパートナズや丸紅などからの注文が多く、
樋口社長は、重すぎる責任を負わされている割には、権限が小さいという
「権限なき責任」に苦しめられていました。
このひずみが、樋口社長の自由を奪っていたというわけです。


そして3つめの理由は、小売りの素人であるにもかかわらず、
樋口社長をサポートする専門家がいなかったこと。
樋口社長は、ユニクロの柳井社長と親交があり、2〜3ヶ月に
1度は会って、ゴルフも共にする間柄だそうです。樋口社長自身、
柳井社長から小売業のについていろいろ教えを請うていたことを
告白しています。ダイエーのテナントにユニクロを誘致できたのは、
樋口社長と柳井社長のリレーションがあったからなのです。
樋口社長が社長続投を示唆していた頃は、ユニクロを事業パートナーに
という話も出ていました。しかし、樋口社長にとっては、時すでに遅し
という感じです。


丸紅サイドとしては、来年5月までは、樋口社長でつなごうという
思惑があったようですが、樋口社長は、スポンサーから信頼を
寄せられていないということに気づいてしまい、続投する
ことをよしとせず、自ら続投を辞退したのでしょう。樋口社長は、
優秀な経営者であると思いますが、スポンサーの思惑に振り回され、
その能力を十分に発揮しきれなかったのは、本当に残念です。


丸紅は現在、「小売りのパートナー探し」に余念がありません。
候補として名前があがっているのが、イオンとウォルマート
しかし、イオンもウォルマートも、商社のような中間流通をはずして
メーカーからの直接仕入れを戦略の柱としている流通業者です。
仮に丸紅とパートナーを組むことになってもうまくいくのでしょうか。


イオンは、ヤオハンやマイカルなどの再建に成功したという
実績を持っています。この先どうなるかはわかりませんが、丸紅の
保有するダイエー株をイオンに売却して、イオン主導で、ダイエー
再建を行うのが、よい方法のような気がします。