食品添加物

「食品の裏側 みんな大好きな食品添加物」 
( 安倍司著 東洋経済新報社
という本、お薦めですよ。
食品添加物の神様」と呼ばれた食品添加物の元トップセールスマンが、
食品製造の裏舞台を明かした告発本です。


この本のよいところは、単に、添加物の危険性のみを並べ立てて、
消費者の不安感をあおるといった内容に終始した告発本ではないと
いうところです。
食品添加物の利点も論じたうえで、食品メーカーの問題点を指摘し、
100%食品添加物を排除するのが不可能な現状において、
消費者は、“食”の安全を確保するにはどうしたらよいかを
提案している点がすぐれていると思います。


そもそも、食品添加物とはなんぞや?
加工食品の味や見た目(色・つやなど)や日持ちをよくするために
使われる粉のことです。
著者は添加物のことを“白い粉”と呼び、業界では、“クスリ”と
呼んでいます。


日本食品添加物協会のHPによると、食品添加物は大きく次の4つに
分類されます。


1.自然界にはないもので、化学的に作り出したもの
2.自然界にあるもので、化学的に作り出したもの
3.自然界にあるものを、そのまま、または取り出したもの
4.本来食品であるものが、添加物的に使われたもの


添加物といってもいろんな種類があるんですね。添加物がなければ、
食べることができない食品もあります。
たとえば、豆腐。豆乳ににがり(塩化マグネシウム)を加えて
作ります。この「にがり」は、日本が古来から使ってきた添加物です。
また、おまんじゅうのふくらし粉として使われる「重曹」も、
こんにゃくを固めるための「水酸化カルシウム」も添加物です。
添加物がなければ、豆腐もおまんじゅうもこんにゃくも食べられない
ということ。


しかし、化学的に作り出した添加物は、本来なら自然界に存在しない
ものなのですから、不自然なもの、つまり、毒性が疑われものも
あります。だって、その使われ方が不自然ですから。


以下は、この本の中で紹介されている実例です。
添加物が特に大量に使われている食品は、
「明太子」
「漬物」
「練り物、ハム・ソーセージ」
だそうです。


たとえば、明太子は、柔らかくて色の悪い低級品のタラコを、
10種類以上の白い粉をざーっと混ぜ込んで作り上げた調味液の
中に1晩つけると、きれいな透き通ったつやつやで、身にひきしまった
高級品もどきの明太子が出来上がるそうです。


厚生労働省は、ネズミなどの動物を使って添加物のさまざまな
毒性テストを行い、使用量や使用対象の食品を厳しく定めていますが、
その安全性は、保証されるものではありません。国の言うように、
単品の添加物に問題はなかったとしましょう。しかし、明太子の例
でもみられるように、複数の添加物を同時に摂取したら
どうなるのでしょうか。
私達は、長年、多くの種類の食品添加物を摂取してきましたが、
「複合摂取」が、人体にどんな影響を及ぼすのかという実験結果は
まだ出ていないのです。まして、世代を超えて、親から子へ、また
その子供へ、将来どんな影響がでてくるのか。親の体に蓄積された
添加物は、濃縮されて、子供に伝えられます。
まさに、今、人体実験が行われているに等しい状況です。


食品メーカーは、そんな危険性のある食品添加物をなぜ使うのでしょうか。
それは、先ほどの明太子の例でも紹介したように、安い食材を、
見栄えのよい、おいしい食品に変えることのできる魔法の粉だからです。


著者は、自分が開発したミートボールが家族の食卓にのぼり、子供が
そのミートボールを口にしようとしたことをきっかけに会社を辞めました。
そのミートボールが、どんなものでできていたか、著者は知っていた
からです。そのミートボールは、ドロドロで、水っぽく、味もない
「くず肉」に30種類もの添加物を加えて作られたものでした。
そのくず肉というのは、牛の骨から削り取る、肉ともいえない部分で、
現在ではペットフードに利用されているものだったそうです。
言ってみれば、産業廃棄物となるべきくず肉に魔法の粉を大量に投入
して、「食品」に仕立て上げたものでした。
自分の子供がまさに、その恐ろしい食べ物を口にしようとしたときに
初めて、目が覚めたのだそうです。


背筋が寒くなるような話ですよね。
でも、私達は、「食品メーカーはひどい!」と糾弾することが
できるでしょうか。ここで著者は、
「消費者は被害者か?」
という疑問を投げかけています。


問題点は、メーカー側、消費者側の両サイドにあると、
著者は述べています。
メーカー側の問題点は、「食についての情報公開」が十分になされて
いないことにあります。情報さえオープンにされていれば、何を
選ぶかは消費者の自由です。しかし、食品添加物にまつわる現状を
多くの消費者は知りようがないのが問題だと著者は指摘しているのです。


一方、消費者にも問題があります。消費者が、「安いもの」「便利なもの」
「見かけがきれいなもの」を求めるからメーカーはそのニーズに応える
必要があるという理屈も成り立つのです。


少々長くなってしまいました。また日を改めて、著者が提案する
食品添加物と上手につきあう5つのポイント」についてまとめて
みたいと思います。