マネージングよりコーチング

プロジェクトX」のあとをうけて、先週から放送スタートした
「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」なかなか、おもしろかったです。
第1回目は、星野リゾートの星野佳路(ほしのよしはる)氏にスポットを
あてていました。星野氏は、星野リゾート代表取締役
大学卒業後、コーネル大学でホテル経営学を学び、日本航空開発、
シティバンク銀行に勤務したあと、家業の星野温泉をついでいます。
星野温泉は1914年に開業した老舗旅館。バブル崩壊後、経営が
傾き、アメリカで学んだホテル経営学を活かし、旅館を再建しようと
しましたが、アメリカ流のトップダウン方式、マニュアル方式に
反発して、100人の社員のうち3分の1がやめてしまったそうです。
その多くはベテラン社員でした。その時の失敗が、星野氏の企業再生術
の大きなヒントとなりました。星野温泉を再生した後は、「アルファー
リゾートトマム」、石川県山代温泉「白銀屋」、伊豆伊東温泉「いづみ荘」
などの再建を果たしました。


 星野氏の人を動かす仕掛けは、なかなかおもしろいです。
①残った社員が財産
 リゾートや旅館の再建に乗り出せば、はじめはそのやり方に反発
 する社員がやめていくのは当然。だからこそ、現場を知っている
 残ってくれた社員こそが財産であるという発想です。そして、この
 考え方こそ、星野氏のリゾート・旅館再建の決してぶれることのない
 軸なのです。日々お客様と接し、現場を1番よくわかっている社員に
 できうる限り権限を委譲して、「任せる」ことで、モチベーションを
 高めていくというのが星野流。
②社長は偉くない
 星野流の組織は、大変ユニークです。普通会社の組織はピラミッド型
 ですが、星野リゾートでは、「フラット型」を基本としています。
 つまり、社員を10人程度のユニットに分けて、各ユニットに責任者
 であるディレクターを置きます。ディレクターは立候補制となっており、
 社員の投票によって、選出されます。また、一般の会社の役員会に
 あたる重要な会議にも社員の誰もが参加することが可能です。
 社員どうしの議論を通じて、重要な決定がなされていくのです。
 星野氏は、議論が脱線を始めた時に軌道修正をするだけ。社員の決定
 には口をはさみません。星野氏は、「自分たちが決めたことだから
 がんばれる。」ということを誰よりもよく知っているのです。
 社長室を持たず、あいている社員の机を借りてデスクワークを行うと
 いうのもユニーク。
 星野氏の考え方は、マネージングというよりコーチングの発想です。
③任せれば、人は楽しみ、動き出す
 星野温泉再建の際、3分の1に減ってしまった若手社員にどうしたら、
 やる気を起こすことができるのか、必死に考えたそうです。お給料は
 上げられない、休みも増やせない・・・。ならば、働くことが楽しいと
 感じてもらえるようにすればいいということに思いが至り、仕事を
 任せて、自分で考え、自分で決めさせることにしました。これが、
 モチベーションを高めて、社員は生き生きと動き出したそうです。
④コンセプトに正解はない
 星野氏はリゾート施設や旅館を再生する際に、徹底的なマーケティング
 リサーチを行い、再生のためのコンセプトを立てます。ターゲットと
 するお客様の層は?どのようなリゾートや旅館を目指すのか?など、
 今後の進むべき方向性の軸となる大切な概念です。星野流では、
 「正しいコンセプト」より「社員が共感できるコンセプト」が重要。
 トップダウンで与えられたコンセプトではなく、社員が試行錯誤で
 たどりついた共感できるコンセプトなら、みなが動くというわけです。


 どうやったら、人を動かすことができるのか?社会生活を送っていれば、
必ず直面する問題です。星野氏のやり方は、大いに参考になりますね。
人を動かすには、マネージングよりコーチング!!