第一ラウンド

企業再生の使命を追って、同じような時期に企業トップに
就いた2人の女性経営者がいます。その2人の女性は、
ダイエー会長の林文子氏と三洋電機会長兼CEOの
野中ともよ氏。お2人のキャリアが、とても対照的だったので、
ずっと注目してきました。
ここにきて株価が、厳しい評価を下しています。
ダイエーは、今年の5月の減資後の株価は約2000円、
昨日の終値が3120円ですから、56%上昇しています。
一方、三洋電機は、今年5月の株価が約300円、昨日の
終値は275円です。


ここ数日で、三洋電機の迷走ぶりが明らかになりました。
10月7日に古瀬洋一郎副社長兼CFOが辞任したのです。
実は、この伏線は、9月28日の投資家向け説明会で明らか
となっていました。
あるアナリストが、三洋電機にとって売上高45%を占める
半導体事業などは、非中核事業であるうえに、400億以上
の赤字を出しているのになぜ切れないのかとの質問をしました。
これに対して古瀬副社長は、自分は切りたいと考えているが、
3人で話あったことはないと答えたそうです。3人というのは、
創業家出身の井植敏雅社長兼COOと野中氏、古瀬氏のことです。
これを聞いた野中氏は顔色を変えて、「何度も話し合っている
でしょう。ただ切るにもお金がいる。それに撤退だけが方策
ではないはず。」と答えたそうです。
メインバンクである住友銀行(現三井住友銀行)出身の古瀬氏は、
不採算部門はまるごと撤退すべきと徹底的なリストラを主張して
きましたが、井植氏ー野中氏ラインは、一部の例外を除いて、
会社の基本的枠組みは変えず、三洋ブランドを維持しつつ
不採算製品の削減や人員削減に取り組むべきという意向で、
事あるごとに対立してきたようです。
それにしても、投資家の前でこのぎくしゃくぶりを露呈しては
まずいです。経営陣が混乱しているのをみれば、誰もが、
危険信号点滅と思うはず。
三洋電機は、株主資本が急減するという爆弾をかかえています。
5年前には5500億円あった株主資本が、今期末は1500億円
まで減り、株主資本比率はなんと5%程度。
いずれ増資をしなければならないのでしょうが、リストラが十分
に進んだと投資家が判断しなければ、増資がうまくいかず、
債務超過に陥る可能性も否定できない状態です。
さて、この難局をどう切り抜けるのでしょうか。


一方、ダイエーは日々進化しています。丸井と業務提携するという
ニュースを発表しました。丸井から店長級の幹部を受け入れ、
外部テナントを導入するノウハウ、丸井ブランドの誘致、
カード事業でのシステム共通化などを検討するそうです。
自前の中核事業は生鮮品や総菜などの食品部門、衣料品や
住関連部門はテナント誘致というように、ダイエーの戦略は
はっきりしています。
それにしても、丸井のノウハウを導入するなんて、昔のダイエー
では考えられない戦略。ダイエーという看板はかがげている
けれど、もう中内ダイエーではないのですね。言うまでもないか。
そういえば、ロゴも刷新しちゃうのですよね。
ダイエーの「d」をハート型にデザインして、色も明るい
オレンジに変えるそうで。なんだか象徴的ですね。
進化するダイエーは、林会長と樋口社長の二人三脚がうまく
いっているようです。


第一ラウンドは、林氏の完勝という感じですが、第二ラウンド
では、野中氏の反撃が始まるのでしょうか。
今後の展開、目が離せません。