21世紀ビジネスのキーワードは?

今日の日経新聞に、ジャック・ウェルチ前GE会長の
インタービュー記事が掲載されていました。
そういえば、久しぶりのウェルチ氏の新刊、
「ウィニング 勝利の経営」(日本経済新聞社)も本屋さんの
目立つところに平積みになってますね。
ウェルチ氏は、「インターネットは経営環境の変化を加速させ、
経営はよりスピードが求められるようになった。」
と言っています。


また、「ユニクロ 背水の再出発」という記事も掲載されて
おり、ここでも、経営のスピード感がキーワードになっています。
2005年8月期のユニクロの売上高は3808億
(見通し)。柳井社長は、2010年までに売上高1兆円を目標に
しているので、あと5年で2.5倍強売上を伸ばす必要があります。
当然、時間を買う戦法をとるため、「世界各国で1番目から5番目
に入るような衣料品チェーンを買収する」M&Aを積極的に
しかけていくようです。
レッドオーシャンのマーケットにおいて、規模の拡大で生き残りを
はかるためには、スピードは絶対条件です。


一方、急速な成長戦略が裏目に出て、経営危機におちいり、
大企業を目指すのをやめたアウトドア衣料品の会社が、米国にあります。
その会社は、パタゴニア
パタゴニアは世界の若者のカリスマ的な人気を集め、支持されている
会社です。世界で初めて回収ペットボトルから再生したフリース
を売り、すべての綿製品を有機綿に変えたことでもよく知られています。
創業者のイヴォン・シュナード氏は、カリスマ的な登山家で、
1970年代から環境に配慮した企業経営を行ってきました。
「ビジネスは誰に対して責任を負うのか?」という問いに対する答えを
考え続けてきた人で、出した結論は、株主でも、顧客でも、社員でもなく、
資源に対して責任があると述べています。
「死んだ地球からはビジネスは生まれない」、健康な地球がなければ
株主も、顧客も、社員も存在しないというわけです。


パタゴニアは、なぜ有機綿にこだわるのでしょうか?
綿は害虫に弱く、大量の農薬・殺虫剤を必要とします。全世界の主要
農産物に占める綿の割合は0.9%ですが、世界中で使われる
農薬のうち綿栽培向けが8%に達するそうです。つまり、他の農産物の
10倍近い農薬が使われている計算になります。
コットンは口に入るものではないから、人体には影響ないというわけ
ではありませんよ。農薬・殺虫剤をまけば、土にしみこみます。
土の中で生きている虫がその影響を受け、虫を食べる鳥、鳥を食べる
もっと大型な生き物の体の中に、毒物が濃縮されていきます。
また、雨水が農薬や殺虫剤を洗い流し、地下水、川、海を汚染
していきます。海の生き物にも毒物は濃縮していくのです。
そして、食物連鎖のターミナルにいるのが人間。巡り巡って、
人間に影響を与えるのです。
私たちの体の中には、どんなに避けようとしても、あらゆる種類の毒物が
少量ずつ蓄積されていくのです。
もうその影響はで始めているのかもしれません。きれる子供、不妊
あらゆる種類のアレルギー、高いがんの発症率・・・・。
こういった問題に関心のある方は、すでに古典になっていますが、
レイチェル・カーソンの「沈黙の春」という本参考になります。


話がそれてしまったので元に戻します。
ビジネスと地球環境の調和という観点から企業経営をみてみると、
急激な成長や、規模の拡大は、地球上の資源や環境を破壊すること
につながります。
パタゴニアも90年代に経営危機に陥る前は、年率50%の売上高
成長率が続き、シェアの拡大を目指していました。
ビジネスは資源に対して責任があるという答えを見つけてから、
年間4〜5%のコントロールされた成長を目指し、年平均2店の
直営店しか開かなくなったそうです。
資本主義の観点からは失格なのかもしれないけれど、最近では、
このパタゴニアのような価値観がナイキのような大企業にも
影響を与えてきているのです。
スピード、規模の拡大も大切ですが、地球が死んだらビジネスも
なにもないんですよね。