健康な土の恵

この間の土・日に、半分仕事半分遊びで、長野に行って
きました。
無農薬で作った野菜の収穫祭があったのです。
工学博士の花岡浩先生の提唱する、共生発酵という土壌改良
の技術で生まれ変わった健康な畑育ちの野菜たちは、
本当においしいんですよ。
土が健康なので、畑からぬいたばかりのにんじんを生のまま
がりがりやったり、きゅうり、なす、トマトなども、もいだまま
すぐ食べるのです。
子供の頃、夏になると、母の田舎である新潟に帰り、おばあちゃん
と一緒に炎天下の畑に行って、野菜をもいで、その場で食べて
いたのですが、あのときと同じ味、同じ香りがしました。
自然の野菜が持つ甘みやおいしさには、どんな高級料理も勝てない
と思います。健康な畑が、少なくなってしまった今となっては、
最高の贅沢です。


畑を見ていて、不思議に思うことがありました。雑草を抜かず
にそのままにしてあるのです。雑草は虫に食われて、
はっぱが穴あきだらけになっているのですが、野菜のはっぱは、
ほとんど虫に食われておらず、元気なのです。
なぜ・・・?


それは、無農薬農法と関係があるようです。
共生発酵という無農薬農法の内容を、以前、花岡先生がお話
をされた講演の内容からまとめてみるとこんな感じです。
『土壌には、3種類の微生物群が共生していて、共に相手の
栄養素を作り出している。その3種類の微生物というのは、
①好気性細菌
 土の表皮から約10cmから15cmぐらいまでに存在し、
 栄養代謝率は高いが、数は少ない
②嫌気性細菌
 好気性細菌の下層に存在し、数が多い
③通性嫌気性細菌
 2つの細菌の橋渡し役
この3種の細菌が、微妙なバランスを保って共生し、土の表層
から深層までの土壌内の栄養素を循環させる役割を担い、豊かな
土壌と病害虫に強い土壌を作り上げている。』
これが、健康な土なのです。畑の関係者の方のお話によると、
健康な土は、栄養をたっぷり含んでいるので、雑草が生えて
いても、野菜の方にも十分に栄養がいきわたります。
また、虫は、雑草の方が栄養価が高いのを知っているので、
そちらを食べるのだそうです。
まさに、健康な土があれば、手をかけずとも、りっぱな野菜
が育つのです。


戦後の日本は、一度にたくさんの収穫をあげるために、土の表層部分
のみを働かそうと、人口的に、化学肥料という形で、
「窒素・リン酸・カリウム」を投与しました。
そのおかげで、表層の好気性細菌が活性化し、急激にその数を増やして
いきます。急激に増殖したものは、急激に減少するのが自然の
摂理ですから、野菜収穫後の畑は、好期性細菌の死骸だらけ
になります。このように自己増殖と自己崩壊を繰り返す好気性細菌
と嫌気性細菌、通性嫌気性細菌のバランスが崩れ、土壌は不健康
になってしまいます。嫌気性細菌は土から病害虫を遠ざける
役割を担っており、その働きがおちてしまった畑には、農薬を散布しな
いと病害虫から作物を守れなくなってしまうのです。
一度、農薬や化学肥料をまいてしまった畑は、自然体にほおっておいて、
元に戻るのに50年ぐらいかかるそうです。


花岡先生は、微生物の共生という自然界の機軸を応用して、たい肥を
生産し、それをまくことで、「薬づけの不健康な畑」を「昔の畑」に
戻しているのです。
この畑からとれた野菜が、昔の畑の野菜と同じ味や香りがしていたのは、
当然ですよね。


「バランス」と「循環」。どんな分野においても、これらが狂って
しまうと、不都合が生じるのだと、実感しながら、おなかいっぱい、
健康な土の恵を堪能しました。