経営の進化論

今朝の日経新聞の1面のコラムはおもしろかった。
東工大教授の本川達雄氏は、「生物は固有の時間を持つ。
小動物は進化が速く短命。大型動物は長命だが環境変化に
弱い。このルールは会社にもあてはまると思う。」
と言っています。
このルールに従えば、小企業は短命を克服するために、
知恵を働かせ、様々なことに挑戦する。一方、大企業は、
なんとか若返り、環境に適応しようと必死になる。


この記事を読んでいて、またあの本を思い出してしまった。
あれです、あれ。毎日しつこくてすいません。
ビジョナリー・カンパニーは、揺るぎのない基本理念の下で、
進化の力を積極的に利用しているというのです。
つまり、「大量のものを試し、うまくいったものを残す」
ことによって意図せぬ進化や突然変異が起こる。これを積極的に
利用しているというわけです。
なるほど、大型動物でありながら、100年以上卓越
した企業であり続けることができたビジョナリー・カンパニー
の秘密は、この進化と突然変異で、環境変化に対応してきた
ことも一因だったわけですね。


進化や突然変異は、いきあたりばったりの試行錯誤の結果で
あったり、「意図的な偶然」の結果であったりするそうです。
たとえば、ジョンソン&ジョンソン。
1980年代、消毒ガーゼと絆創膏を主力製品にしていましたが、
ある薬用絆創膏で患者が炎症を起こしたという、医師からの
抗議の手紙に対処するために、パウダーを送ったそうです。
そして、同じようなクレームに対処するために、パウダーを
小さな缶に入れて製品と一緒に同封しようという提案が
採用されました。その後、意外なことにパウダーが欲しいという
注文が消費者から寄せられるようになり、有名な「ベビー・パウダー」
が独立した商品として販売されるようになったそうです。
医療用品や医薬品主体の会社が、このような偶然から消費財
という市場に進出するようになったのです。


もう1つ例をあげてみます。3M(スリーエム)という会社を
ご存知ですか。あの「ポストイット」を作っている会社です。
創業は1902年。サンドペーパーの原料になる研磨剤原料を
採掘する会社からスタートしました。これは、失敗に終わり、
致命的な打撃を受けますが、大英断で、サンドペーパーと
砥石車の製造に事業転換することで、生き残ります。
この失敗から学んだことは、
「すべてのタマゴをひとつのかごに入れない」です。
資産運用における分散投資の効用を説明するときに使われる
比ゆですが、ビジネスにおいても、1つの事業に全てをかけて
しまうと、打撃が大きい。そこで、常に内部で変異を遂げていく
組織をつくり、従業員それぞれの創意工夫によって前進をしていく
仕組みをつくることになりました。
ともかくいろいろなアイディアを試してみて、ものに
なるものは育てていき、ちょうど、1本の幹から無数の小枝が
にょきにょき伸びているような製品進化の枝分かれが起こり、
環境変化に適応していったのです。
この環境がなければ、サンドペーパーを作っていた会社から
ポストイットが誕生することはなかったわけですね。