崩れた12の神話

昨日ご紹介した「ビジョナリー・カンパニー」、かなり
おもしろいです。
設立後50年〜100年という長きに渡り、商品のライフ・サイクル
を超え、優れた指導者が活躍できる期間を超えて、常に業界の
卓越した企業であり続ける18社の共通点はなんなのでしょうか。
私たちがよい企業かどうかを判断するときに、ある意味
常識と思いこんでいる神話(本書では、こう呼んでいます。)が、
ことごとく覆されているのがわかります。


12の崩れた神話
①すばらしい会社をはじめるには、すばらしいアイディアが必要である。
 →設立当初から成功をおさめた企業の比率は、比較対象企業より 
  ビジョナリー・カンパニーの方がかなり低い。
②ビジョンを持った偉大なカリスマ的指導者が必要である。
 →まったく必要ない。こうした指導者はかえって、会社の長期の
  展望にマイナスになることもある。
③とくに成功している企業は、利益の追求を最大の目的としている。
 →最大の目標とは限らない。確かに、利益は追求しているが、
  単なるカネ儲けを超えた基本的価値観や目的といった基本理念も、
  同じように大切にされている。
④ビジョナリー・カンパニーには、共通した「正しい」基本的価値観
 がある。
 →基本的価値観に「正解」といえるものはない。
⑤変わらない点は、変わり続けることだけである。
 →基本的価値観は揺ぎなく、時代の流れや流行に左右されること
  はない。一方で進歩への意欲がきわめて強いため、大切な基本理念
  を曲げることなく、変化し、対応できる。
⑥優良企業は、危険を冒さない。
 →「社運を賭けた大胆な目標」に挑むことをおそれない。
⑦ビジョナリー・カンパニーは、だれにとってもすばらしい職場である。
 →その基本理念と高い要求にぴったりと「合う」者にとってだけ
  すばらしい職場である。
⑧大きく成功している企業は、綿密で複雑な戦略を立てて、最善の
 動きをとる。
 →「大量のものを試し、うまくいったものを残す」方針。実験、
  試行錯誤、臨機応変によって偶然に生まれたものもたくさんある。
  種の進化によく似ている。
⑨根本的な変化を促すには、社外からCEOを迎えるべきだ。
 →ビジョナリー・カンパニーの延べ1700年の歴史の中で、
  社外からCEOを迎えた例はわずか4回。それも2社だけ。
  根本的な変化と斬新なアイディアは社内からは生まれないという
  一般常識は、ビジョナリー・カンパニーにはあてはまらない。
⑩もっとも成功している企業は、競争に勝つことを第一に考えている。
 →ビジョナリー・カンパニーは、自らに勝つことを第一に考える
⑪2つの相反することは、同時に獲得でいきない。
 →二者択一を拒否し、例えば、集団としての文化か個人の自主性か、
  保守的なやり方か社運を賭けた大胆な目標かといった相反する
  AとBの両方を同時に追及できるという考え方。
⑫ビジョナリー・カンパニーになるのは主に、経営者が先見的な
 発言をしているからだ。
 →ビジョナリー・カンパニーが成長を遂げたのは、経営者の
  発言が先見的だからでは決してない。


時代を超えて、圧倒的に卓越した存在であり続ける企業をつくりあげた
人たちは、とくに優秀なわけでも、とくにカリスマ的なわけでも、
とくに創造的なわけでも、とくに複雑なことを考えたわけでも、
とくに偉大な理想を考え出す能力に恵まれていたわけでもないようです。
基本理念を維持し、進歩を促す組織を築いていく終わりのない過程に、
長期的に取り組めるかどうかが大切ということでしょうか。
しかし、それは容易なことではありません。だから、ビジョナリー・
カンパニーなのでしょう。
こんな観点で、会社をみてみると、投資の価値観がちょっと変わり
ますね。