「車の女」から「スーパーの女」へ

ダイエーの会長に就任する予定の林文子氏が、とても
気になります。
林氏の前職は、BMW東京株式会社の代表取締役
この方の職歴をみてみると、まさに普通のOLさんが、
女性経営者へと変化していく様がみてとれます。


東京都立青山高等学校卒業後、東レ、松下電気産業勤務。
23歳で結婚。31歳でホンダの販売店に入社して、
当時では珍しい女性の自動車セールスとなる。入社翌月
よりトップセールスに。41歳でBMW株式会社に入社。
約5年間で400台のBMW車を販売し、同社初の
女性セールスとして、営業管理職に入る。
47歳で、新宿支店長に抜擢。成績最下位だった同支店を
最優秀支店に育てる。
52歳で、中央支店長に就任。同支店も最優秀支店に。
フォルクスワーゲングループにヘッドハンティング
58歳で、BMW東京株式会社代表取締役社長に就任。


この方、はっきり言ってすごいです。ホンダのセールスとして
入社した当時は、外回りをして車を売ってくるという発想が
なく、車は、お客様がショールームにきて買うものという
時代でした。そこで、林氏は、1日100件、
「車のご用命はありませんか」と1件1件のお宅をまわることを
日課にしていました。
そして、「話を聞いてくれたこの人の役に立ちたい」という
おもてなしの気持ちを常に持ち続け、顔見知りになった
お客さまが、風邪で調子が悪いといえば、近くに買い物に
走るなど、完全なるサービス業に徹して、お客様の心を動かし
契約につなげていったそうです。
これ、なかなかできることじゃありません。
私も証券営業時代に、「1日100件、必ず見込み客に
電話アプローチする。」なんて決めていたのですが、目先の
仕事に中断され、できなくて・・・。でも、これは、いいわけです。


お客様に育てて頂いたというこのときの経験が、その後管理職に
なり、部下を育成するときにも大いに役に立っています。
林氏は言っています。
「部下を育てるのは、今すぐ結果を求めず、子どもを育てると思って、
心を傾けてあげてください。まず、心のベースを作ってから仕事の
スキルUPをさせてあげてください。」
人とふれあい、理解することの大切さをよくご存知の林氏ならではの
言葉ですね。


さて、ダイエー再生をまかされた林氏。
なんか、伊丹十三監督の「スーパーの女」のヒロイン、宮本伸子扮
する井上花子と重なってみえるのは私だけでしょうか。
お客をお客とも思わない悪徳スーパー「安売り大魔王」に対抗し、
「正直屋を日本一お客さまの立場に立ったスーパー」
にするため、スーパーの従業員やお客さまの心を動かして、次々に
自分の仲間を増やし、思いを実現させていく。
その原動力は、徹底した現場主義とコミュニケーション、そして、
人の心を動かす熱意です。
“車の女”から“スーパーの女”へ転身した林氏の動きに、
大・大・大注目です。