個人投資家獲得作戦
いろいろな企業がIRに力を入れていますが、日経金融新聞に
アサヒビールの取り組みが紹介されていました。
株主総会後に自社製品試飲会を開き、その席に池田弘一社長が
出席し、株主との交流をはかるというものです。
他のビール大手ではやっていない活動で、ちょっと興味あり。
もちろん、このような活動の目的は、個人株主のすその
拡大にあります。
①アサヒビールファンを作ること
②持ち合い解消売りの受け皿を作ること
この2点がポイント。
①について
短期売買の投機家は別として、普通、ある会社の株を買う
理由のかなり大きな部分を占めるのは、「その会社の商品や
サービスが好きだから」だと思います。
実際、アサヒビールが昨年9月末に実施した調査によると、
一般消費者の1人あたりアサヒ製品の平均購買額は、
月間で、518円。一方株主は、5057円と、約10倍。
これ、説得力ありますよね。
売上げに貢献すれば、自分が保有する株にとってもプラス
になるのですから。
②について
持ち合いというのは、企業が経営の安定化をはかるために、
取引先の銀行や事業会社の株をお互いに保有することをいいます。
そう、今話題のM&Aの防衛策です。
ちなみに、大和総研のデータによると、
企業間の持ち合いの比率は、
91年度 金額ベース27.7% 株数ベース23.6%
03年度 金額ベース 8.6% 株数ベース 7.4%
12年前の約3割の水準になってしまいました。
この背景には金融ビッグバンの流れの中で、時価会計の導入や、
銀行の不良債権処理の進展などがあります。
ともかく、大量の株が市場に放出され、その受け皿が必要に
なったのですが、長期保有の個人投資家を取り込むことが、
大変重要な課題になってきたのです。
会社のファンになってもらい、長期間、株を保有してくれる
個人株主層が拡大すれば、かなり強力なM&A防衛策になります。
これには時間もかかるし、努力も必要です。
しかし、これこそが、企業の本来あるべき姿なのですよね。
配当政策や株主優待もかなり充実してきたし、今まで企業間の
都合で動いてきた株式市場が、ようやく、個人投資家にも魅力の
あるものになってきたような気がします。
ライブドアの堀江氏は、結果的に、その動きにドライブをかけて
くれました。
誰にでも開かれた株式市場の運営を望む個人投資家としては、
その点について、拍手。