胸に刺さる言葉

昨日、尼崎の脱線事故の遺族の方が、今回の事故やなかなか進まない
救出作業について、こんな話をしておられました。
「責めるつもりもないし、責めてもしょうがないと思っています。
今回の事故は、誰のせいというより、社会の緩みが引き起こした
ものだと思います。それは、自分も含めて、社会全体が
生み出したもの。事故にまきこまれた方は、社会の緩みの犠牲に
なったのだと思っています。」
この言葉に、大変胸をうたれました。


企業の使命は、売上げを伸ばし、利益を上げ、企業価値を高め、
株価を上げ、株主に報いること。ニッポン放送株をめぐる
フジテレビ VS.ライブドアが発端となったM&A騒動の中では
この側面がクローズアップされています。
収益性の追及と効率性の追求か。
では、消費者の役に立つとか、消費者の安全という観点はどこへ
いってしまったのでしょうか。
今回の事件の原因は特定されていませんが、車体の軽量化、
過密ダイヤ、リストラなど、収益性と効率性の追求によるひずみが
背景にあるといわれています。特に、懸念されるのは、「人の育成」
の問題です。
国鉄時代に大量採用された社員はベテランになる一方で、
民営化に伴う採用抑制のあと、1997年から高卒採用を復活。
ベテランの技能を若者に伝承すべき中堅層が薄いといういびつな
人員構成になっているのです。
「真ん中がぬけた、“まぬけ”な状態」です。
過去に起こった事故や企業の不祥事の根本にあるものと一緒です。


少し前の日経新聞で、三菱重工が取り組んでいるベテランから
若手への技能伝承のための仕組み作りについて特集していました。
かつては、優れた技術力をもつ企業の代表格であった三菱重工
一次は開発中止もあやぶまれたH2Aロケットの打ち上げ失敗に
象徴されるように、技術力の低下が目につきます。
その根本に「人の育成」の問題があり、これまた、企業運営の
プライオリティを収益性、効率性においたひずみの結果による
ものです。三菱重工は、その問題に取り組み始めました。
「人の育成」には、時間もかかるし、お金もかかるが、
特に、技術を売りにしている会社にとっては、絶対に手をぬいては
いけない最重要事項です。
株主のためにも大事ですが、お客さまのためにという視点を大切に
しないと、最後には、社会的に認められない企業になってしまいます。


社会の緩み・・・。突然、大切なご家族を亡くされて、
激しく動揺された状態で、「自分も含めて」とおっしゃった遺族の方
の言葉が、胸に突き刺さります。